この記事では、暑い季節になると起立性調節障害(OD)の症状がつらくなる理由と、最近私が効果を実感している、炭酸水を使った対策法についてご紹介します。
「夏になると立ちくらみやだるさがひどくなる…」
そんなふうに感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
暑い季節にODが悪化するのはなぜ?
起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、立ち上がったときに血液が下半身にたまりやすくなり、脳への血流が不足することで、立ちくらみ、動悸、頭痛、だるさなどさまざまな症状を引き起こします 。
暑い季節になると、さらにこの状態が悪化しやすくなりますが、考えられる理由は主に次の3つです。
① 汗をかくことで脱水が進む(循環血漿量の低下)
暑いと体温を下げるためにたくさん汗をかきます。このとき、体内の水分と塩分が失われます。脱水が進むと循環血液量が減り、脳への血流もさらに少なくなり、ODの症状が悪化しやすくなると考えられます。
② 血管が広がりやすくなる(血管拡張)
暑熱環境下では、皮膚への血流を増加させることで、体温を下げようと試みます(対流を利用した放熱)。皮膚血流を増加させるために、体の血管が広がり(血管拡張)のですが、同時に血圧が下がりやすくなってしまいます。血圧が下がると脳に十分な血液を送り届ける力も弱くなってしまい、立ちくらみやふらつきが起きやすくなります。
③ 自律神経に負担がかかる
体温を調整するために、自律神経はフル回転で働きます。でも、ODの方はもともと自律神経のバランスが乱れやすいため、暑さによる負担に耐えきれず、症状が悪化しやすくなると考えられます。
炭酸水に期待できる“脳血流アップ効果”
最近、「炭酸水を飲むことで脳血流が増加し、気分も改善される」といって研究結果が発表されました。
これによると、炭酸水を飲んだ人は中大脳動脈(脳へ血液を運ぶ大切な血管)の血流速度が上がり、同時に気分(ムード)も改善したそうです(Physiol Behav. 2022)。
これは、炭酸水に含まれる二酸化炭素(CO₂)が体内に取り込まれることで、脳血管が拡張し、血流量が増えるためだと考えられています。
もともと脳は二酸化炭素にとても敏感な臓器で、わずかな変化でも血流を大きく調整します 。つまり、炭酸水を飲むことで、暑さや脱水で減りがちな脳血流をサポートできるかもしれない、というわけです。
さらに、脳血流が改善することで、だるさや気分の落ち込みといった二次的な症状にも良い影響が期待できるかもしれません。
暑い季節におすすめの「炭酸水活用法」
では、ODの方が炭酸水をうまく取り入れるにはどうすればいいでしょうか?
●冷やした炭酸水をコップ1杯
実際の研究では、4°Cに冷やされた炭酸水か非炭酸水を30秒以内に、男性=150mL、女性=100mL、飲んでもらったそうです。
このため、常温でも効果があるかは不明ですが、脳血流増加のメカニズムが二酸化炭素によるものであれば、問題ないのかもしれません。
ただ、私の経験則では、冷えた炭酸水の方が実感があります。
● 無糖・無香料の炭酸水を選ぶ
砂糖やカフェインが含まれている炭酸飲料は遺尿効果による体液量の減少など、逆効果になる可能性も考えられるので、無糖・無香料のものが無難でしょう。
● 炭酸水はあくまで「補助的な対策」
炭酸水による効果は一時的なものと考えられるので、あくまで補助的な対策として、入浴時などには良いアイテムだと思います。
● 発汗時に失った電解質の補給も忘れずに!
脱水を防ぐためには、水分だけでなく塩分(ナトリウム)も一緒に補給することが大切です。
スポーツドリンクや経口補水液もうまく併用しましょう。
まとめ:炭酸水で“暑さに負けない体”づくりを
暑い季節は、ODの方にとってつらい試練の時期だと思います。
しかし、こまめな水分・塩分補給、そして炭酸水をうまく取り入れることで、脳血流を保ち、症状をやわらげる一助になるかもしれません。
できることから少しずつ、自分の体を守る工夫をしていきましょう。
ではまた!
Ingestion of carbonated water increases middle cerebral artery blood velocity and improves mood states in resting humans exposed to ambient heat stress. Physiol Behav. 2022

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