Key Word:ナラティブセラピー
はじめに
名言や偉人の格言というのはその人の人生が反映されていて面白いです。
人は苦境に立たされると視野が狭くなりがちですが、そこに新たな視点を与えてくれ、苦境を乗り越えるヒントをくれたりもします。
これまで、起立性調節障害(OD)に認知行動療法(CBT)は有効で、認知行動療法と名言は親和性が高いので、いろんな名言を知ることで回復のきっかけになり得ることを説明しました。
また、CBTの手法の一つに〈希望の言葉〉を集め、持ち歩くといった方法があります。ネガティブな呪いの言葉が脳内に流れたら、集めた希望の言葉を見返し、非機能的な(何も生み出さない)思考を、機能的な思考に修正していこうという訳です。
私自身も実践している方法ですが、自分で希望の言葉を生み出すのはそう容易いことではないので、以下に紹介する名言・格言にヒントを得つつ、自分が希望を抱ける言葉に編集し、自分のものにしていってもらえたらと思います。
「ゆっくり進むことを恐れるな。立ち止まることを恐れよ。」中国の諺
この言葉は、中国の古いことわざです。
ODに対しての有効性
体調不良で学校を休む日が続いたり、寝ているだけで1日が終わっていくと焦燥感が湧いてきます。
私も、同級生が年代別のサッカー日本代表に選出されたり、プロの内定者が出るなか、自分は何もできずに留年が決まった時は、人生の負け組が決まったかのような感覚になったのを覚えています。
この言葉は「速さよりも、止まらないことが大切である」と教えてくれます。
CBT的視点
「他人との比較(Social Comparison)」は心身の疲弊に繋がります。
「あの人に比べて自分は遅れている」と感じるのではなく、「自分のペースで進めばいい」と考えられるかどうかが重要です。
比較対象を周囲から過去の自分にすること。視点をしんどい現状だけでなく、長い人生で捉え直してみることで視野狭窄から脱却しやすくなります!!
心理学の世界ではナラティブ・セラピーというものがあります。
オーストラリアの心理学者マイケル・ホワイト(Michael White)とデビッド・エプストン(David Epston)によって開発された心理療法の一種です。このアプローチでは、自分の人生を「物語(ナラティブ)」として再構築し、ネガティブな出来事を異なる視点から解釈することで、自己のアイデンティティや行動をより前向きなものに変えていこうと図ります。
苦境にあるとき、「自分はこの物語の主人公であり、これは成長のための試練である」と捉えることで、困難を乗り越える意欲を高めたり、絶望感の軽減につながります。
私は「自分がおじいちゃんになって、自分の人生を孫に話している状況を想像し、その時、今の状況をどう伝え、どう乗り越えたと説明しているだろうか?」と考えることが多いです。
「あなたの時間は限られている。他人の人生を生きるな。」スティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)
皆さんご存知、スティーブ・ジョブズ(1955-2011)は、アップル社の創業者であり、数々の革新的な製品を生み出しました。彼は癌(がん)の宣告を受けた後、人生について深く考え、「自分の道を生きることが最も重要だ」と語りました。
ODに対しての有効性
これまでも何度か触れてきたようにODの人にはある一定の性格傾向が知られています。それは過剰適応です。自分の意思よりも周囲の期待に応えることが最優先となり、頑張る理由が自分ではなく他人あります。
それでもって、私は、本人がこれに気づかぬまま、無理をし続けることも往々にしてあるように思います。周囲の期待に応えたい・周囲の期待を裏切りたくないという気持ちが動機になっている状況ですが、これだけだった場合、自分の行動は「他人の期待」にコントロールされているも同然です。
他人の期待に応えたいという気持ちは素敵ですが、それだけではなく自分自身の頭で考え、自分の価値観や信念に従って、自分で選択できるようにしていきたいものです。
スティーブ・ジョブスのこの言葉は「他人と同じである必要はない、自分なりの道を進めばいい」と気づかせてくれます。
CBT的視点
「他者基準の自己評価(External Validation)」。
他人と比較するのではなく、「自分にとって大切なことは何か」を考えることで、より自分らしく生きることを目指します。
とはいうものの、自分の信念や価値観が明確な人はそう多くないと思います。特に中高生は自我同一性の確立が発達課題ですし、価値観や信念の形成中だといえると思います。
だからこそ、この時期に起きた大きなライフイベント(ODの経験)は自己の形成に大きなインパクトを与えます。この経験をどう解釈するかでどのような価値観・信念を持った大人になっていくのか、、、
認知的再評価が鍵を握ります。
ではまた!

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