起立性調節障害にACT〜こころの柔軟性を育てる心理療法〜

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起立性調節障害(OD)は、朝起きられない、立っていると具合が悪くなる、ふらつきや動悸などの身体症状が特徴です。一方、「心身症」としての側面も持っており、ストレスや不安が症状を悪化させることがあります 。

この記事では、そんな「こころと体」がつながっているODに対して注目されている心理療法「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」をご紹介します。

ACTとは? 〜「症状をなくす」ではなく「やりたいことを大切にする」〜

ACTは、1990年代にアメリカの心理学者スティーブン・ヘイズらによって開発された「第3世代の認知行動療法」と呼ばれる心理療法です。

ポイントは以下の通りです:

つらさをなくそうとしない(=受け入れる:アクセプタンス)

自分にとって大切な方向に向かって行動する(=コミットメント)

ODのように、遺伝的要素(体質)が影響しており、完全に症状が消えにくい場合では、「治すこと」にこだわりすぎると、逆に不安や絶望感が強まりやすいです。ACTは「今の体調のままでも、自分の人生において重要なことに向かって少しずつ進む」という考え方に基づいており、症状との“戦い”をやめ、こころの柔軟性(心理的フレキシビリティ)を高めることを目指します。

ACTがODに有効な理由

1. 心身症としての性質とマッチする

ODは自律神経機能の破綻によって起こる身体疾患ですが、心理社会的ストレスが強く関与する「心身症」としての性格を持っています 。そのため、症状の改善には心理面へのアプローチが不可欠です。

2. 「回避行動」をやめることで回復を促進

ACTでは、「つらさを避けようとする行動」(例:朝がつらいから学校に行かない、外出を避ける)を「経験回避」と呼び、これが逆に生活の幅を狭め、うつ傾向や孤立感を強める原因になると考えます。ODにおいても、これらの回避行動が二次障害(不登校・引きこもりなど)につながりやすく、悪循環を引き起こすと考えられます 。

ACTは、症状があっても「自分にとって意味のある行動」(例:友達との関係を大事にする、好きなことを少しでもやってみる)をとることをサポートします。

ACTを実生活に取り入れるには?

ACTを専門家と行うのが理想ですが、日常生活でも実践できるワークがあります。

● 簡単にできるACTワーク

1. 「今」の感覚に注意を向ける(マインドフルネス)

 → 呼吸に集中する・体の感覚に気づく

2. 症状を否定せず、ラベルを貼る

 → 「また心臓がドキドキしてるな」「これは私の“ODあるある”だな」と捉える

3. 自分の価値観を思い出す

 → 「私は、家族との時間を大切にしたい」「将来、人の役に立ちたい」

4. できる範囲で小さな一歩を踏み出す

 → 例:「朝5分だけ外の空気を吸う」「オンライン授業だけ出てみる」

症状があっても、「自分の人生」をあきらめない

ACTは、「症状をコントロールする」のではなく、「症状があっても、自分の価値観に基づいて生きる」ことを大切にする心理療法です。ODのように、治療が長期にわたる病気だからこそ、自分の人生を取り戻す「こころの柔軟性」が力になります。

もし、起立性調節障害の症状で日常が制限されてつらいと感じていたら、一度ACTの考え方にふれてみてください。きっと、新しい視点と希望が見えてくるはずです。

以下、日本心理学会のACTに関する記事です。参考にしてください。

心理学ワールド 87号 特集 アクセプタンス&コミットメント・セラピーのこれから 木下 奈緒子(イーストアングリア大学) | 日本心理学会
公益社団法人日本心理学会の公式ホームページ

ではまた!

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