日々、屋内で長時間過ごしていると、「なんとなく疲れやすい」「夜ぐっすり眠れない」と感じることはありませんか?
私も起立性調節障害(OD)で体調の悪い日の午前中は特に、部屋で横になり続けてしまうことがあります。
ODなど自律神経に関係する症状を抱える方にとって、「日光」というは無視できないテーマです。
今回は、2014年に発表されたBoubekriらの研究が、日光への曝露と健康・睡眠の質の関係について触れられていて、ODのヒントになり得るか考えてみます。
実験の概要──日光の当たる環境 vs. 日光の当たらない環境
この研究では、ある同じビル内の2つのオフィスグループを比較しました。
• 日光の当たらない環境に勤務する27名
• 日光の当たる環境に勤務する22名
両グループに以下の調査や測定を実施しました。
• 睡眠パターンの客観的評価(アクティグラフィー)
• 睡眠の主観的評価(Pittsburgh Sleep Quality Index)
• QOLの評価(SF-36)
• 身体活動量の計測
驚くべき結果──窓があるだけで睡眠の質が改善!
1. アクティグラフィーによる客観的データ
•日光ありグループは、1日に46分も長く睡眠を取っていた
• 睡眠効率も高く、より規則正しい生活を送っていた
2. 主観的な睡眠評価(PSQI)
• 日光ありグループの方が睡眠の質が高く、日中の眠気も少なかった
3. 健康関連QOL(SF-36)
• 身体的・精神的な健康スコアともに日光ありグループが高得点
4. 身体活動量
• 窓ありグループは、1日の身体活動量も有意に多かった
太陽光によるサーカディアンリズムのリセットが、活力を生んでいたと考えられます 。
なぜ日光が重要なのか?
人間の体内時計(サーカディアンリズム)は、光によってリセットされます。
特に朝の光を浴びることで、「今が朝だ」と脳が判断し、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が抑えられ、活動モードに切り替わります。
逆に、光不足=体内時計の乱れ=自律神経の乱れにもつながります。これはまさに、ODのような心身症にも関わってくる問題です。
ODの人にとっての教訓
この研究結果は、ODやPOTS(体位性頻脈症候群)に悩む方々にとって非常に参考になります。体調不良により部屋で寝た状態が多くなるのは仕方のないことである一方で、そんな時でさえ、どういった環境で寝込むかを工夫することで、症状改善や悪化防止のための一手が打てます。
• 朝起きてすぐに窓の近くに行き、10分だけでも自然光を浴びる
• 日中、起き上がれない時も、なるべく明るい場所で過ごす
• もし可能ならベランダや庭でのストレッチや深呼吸
これは特別な薬や高額な治療ではなく、ゼロ円で始められるセルフケアです。
自然光を「浴びる」だけ
「たかが光」と思っていませんか?
今回の研究は、「日光」という自然の力が、睡眠、活動量、メンタルヘルス、そして健康全体にまで影響する可能性があることを示唆しています。
もし今、生活リズムの乱れや疲労感、寝つきの悪さに悩んでいるなら、まずは「光」を味方につける生活を意識してみてください。
それが、体内時計を整え、毎日の体調を支える第一歩になるかもしれません。
ではまた!

Boubekri M, Cheung IN, Reid KJ, Wang CH, Zee PC. Impact of windows and daylight exposure on overall health and sleep quality of office workers: a case-control pilot study. J Clin Sleep Med. 2014 Jun 15;10(6):603-11. doi: 10.5664/jcsm.3780. PMID: 24932139; PMCID: PMC4031400.
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