起立性調節障害の「夜のスマホ」問題:睡眠リズムと光の波長の影響

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起立性調節障害(OD)では、朝が起きられない、立ちくらみがする、頭が働かない……などといった症状に悩まされる身体疾患です。これらの症状には生理的な原因がありますが、その主な原因には自律神経機能不全が深く関わっています。

そしてこの自律神経機能不全によって、サーカディアンリズムが乱れ、さらに生活リズムの乱れにつながり、OD症状を悪化させるといったループが考えられます。

睡眠障害を伴うODの場合は、自律神経機能の改善のためにも、睡眠の質を改善することは重要です。

そこで今回、注目すべきは「夜のスマホやTVの使用」です。近年の研究で、これらのデジタル機器が睡眠障害にどう影響しているのかが明らかになってきました。

「光の波長」って何?ブルーライトとの関係

まず、「光の波長」とは何かを簡単に説明しましょう。

光は、波のように振動するエネルギーで、波の長さを「波長(はちょう)」と呼びます。この波長の違いによって、光の色が決まります。

赤い光は「長い波長」(おだやかな波)

青い光は「短い波長」(鋭い波)

人間の目に見える光(可視光)は、だいたい380〜780ナノメートル(nm)の範囲にあるとされています。その中でも、ブルーライトはおよそ450nm前後の短い波長を持ちます。短い波長はエネルギーが強く、網膜や脳に大きな影響を与えることが知られています。

たとえば:

• 昼間の青空 → 短波長の青い光が多く含まれる

• 黄昏時や暖色系の豆電球、ろうそくの光 → 長波長で、脳をリラックスさせやすい

つまり、スマホやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、脳を「昼間」だと錯覚させ、眠気を吹き飛ばしてしまうのです

夜のブルーライトが睡眠を乱すしくみ

Greenら(2017)の研究では、夜間にコンピューター画面を見ることで、睡眠の質や生体リズム、さらには集中力にまで影響が出ることがわかりました 。

特に面白い発見は、「光の強さよりも、波長(=色)」が睡眠への影響に大きく関係していたという点です。明るさが同じでも、青い光はメラトニン(眠気を引き起こすホルモン)の分泌を強く抑え、眠気を妨げます。

OD患児はもともと睡眠リズムが崩れやすく、寝つきが悪く、朝も起きづらい傾向があります。そこにブルーライトが加わると、さらに体内時計が後ろにズレてしまい、「昼夜逆転」の悪循環に陥ってしまうのです。

睡眠を守るためにできること

ODの改善には、日中の活動と夜間の休息という基本的なリズムを取り戻すことが大切です。以下の工夫が、ブルーライトによる悪影響を軽減する助けになります。

夜9時以降はスマホ・パソコンを使わない

ブルーライトカット眼鏡を使う

間接照明や暖色系の照明を使う(オレンジ色のライトがおすすめ)

寝る前の読書やストレッチで、脳に「眠る準備」を伝える

親の対応:取り上げるのではなく、上手につきあう

スマホの没収や制限というのは、スマホを触らないという観点では確実な方法かもしれませんが、人間、強制されると反発したくなるのは自然な反応です。特に中高生であれば、親に頼りすぎず、自立したいという気持ちと、まだまだ未熟で親を頼らざるを得ないという葛藤の時期でもあります。

大切なのは、押し付けではなく、正しい知識を共有して、本人と一緒に考える姿勢です。

「光の色(波長)が脳に影響を与える」という科学的な視点は、本人の納得や行動変容にもつながりやすくなるかと思います。

ではまた!

Green A, Cohen-Zion M, Haim A, Dagan Y. Evening light exposure to computer screens disrupts human sleep, biological rhythms, and attention abilities. Chronobiol Int. 2017;34(7):855-865. doi: 10.1080/07420528.2017.1324878. Epub 2017 May 26. PMID: 28548897.

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