前回、起立性調節障害という病気の特徴を理解し、その上で自分自身の症状の特徴を把握することで、病気に伴う不安が軽減されたり、生活がしやすくなるよ!
といった内容を述べてきました。
そこで今回は、
起立性調節障害とはどんな病気なのか、
専門医の間ではどのように説明されているのか?
について書いていきます。
専門医いわく_起立性調節障害の病態
小児起立性調節障害診療ガイドライン 改訂第3版では、どのように説明されているかみてみると、
起立に伴う循環動態の変化に対する生体の代償的調節機能が何らかの原因で破綻して生じたもの。
と説明されています。
以下では、この説明について、もう少し噛み砕いて考えてみるとします。
- 起立に伴う循環動態の変化
- 生体の代償的調節機能
- 何らかの原因
の3つのポイントから見てみましょう!
1.起立に伴う循環動態の変化(=起立する時、体の中では何が起きているのか?)
私たちが普段、横になっている時というのは、
脳・心臓・足は同じ高さに位置しているので、血液は全身を流れて心臓に戻るのが比較的簡単です。
しかし、急に立ち上がると重力の影響で、血液が足や下半身に流れ込み、溜まってしまいます。
すると心臓に戻ってくる血液の量(静脈還流量)が減ります。
心臓は戻ってきた分しか、送り出せないという性質があります。
そのため、これは、脳や全身に送り出す血液量も減ってしまうということを意味します。
送り出す血液が減ることで、血圧は瞬間的に下がります。
そしてこの状態が続くと、脳に十分な血液が行かなくなり、「めまい」や「立ちくらみ」が生じ、場合によっては失神してしまいます。
でも、それでは困るので、人間の体にはこの血圧低下を防ぐ仕組みが備わっているんですね。
2. 生体の代償的調節機能とはなんぞや?
人間の体に備わった、血圧低下を防ぐ仕組みについて簡単にみてみます。
①血圧を感知するセンサー(圧受容器)
首や胸の血管には、血液量や血圧の変化を感知するセンサーがあります。起立による静脈還流量や血圧低下をすぐに感知します。
②自律神経の働き
感知した情報が脳に送られると、自律神経が働きます。この時、交感神経が活性化し、次のような反応が起こります
• 心拍数の増加:心臓を早く動かして、たくさん血液を送ろうとします。
• 血管収縮:特に血液が溜まっている足の血管が収縮することで、血液が心臓に戻りやすくなります。
③血圧の回復
これらの仕組みで、数秒以内に血圧が元のレベルに戻るんですね。
この一連の仕組みがうまく機能しないのが起立性調節障害だと言うことです。
そしてこの代償的調節機構が正常に働くには以下の要因が重要になります。
循環血液量:体の中を流れている血液の全体量のこと。
心拍出量:心臓が1分間に送り出した血液量のこと。(心拍出量=心拍数×一回心拍出量)
末梢血管特性:起立性調節障害の場合、特に足の血管が収縮したり拡張したりして、血圧を調整する役割がある。
脳循環調節特性:脳血管自動調節能(オートレギュレーション)
脳の血管は特別な仕組みを持っていて、血圧が変化しても脳に必要な血液量を安定して保つことができます。この能力を「脳血管自動調節能」といいます。
自律神経機能:上記の調節を統合していている(脳血管自動調節能は神経系を介さない)。
つまり起立性調節障害は、上記いずれかの機構に異常が生じた機能性身体疾患だとされています。
今回はガイドラインに記されている起立性調節障害の病態の説明
「起立に伴う循環動態の変化に対する生体の代償的調節機能が何らかの原因で破綻して生じたもの。」
について、起立に伴う循環動態の変化と生体の代償的調節機能を見てきました。
次回は何らかの原因についてみていきたいと思います。
ではまた!
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