起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)は、主に思春期の子どもに発症する自律神経系の疾患で、朝起きられない、立ちくらみ、頭痛、動悸、全身のだるさなどの症状が特徴です。
この病気は本人にとって非常に辛いものですが、実はそのストレスは家族、特に親にも深刻な影響を与えています。
ここでは、子どもと親のストレスがどのように重なり合うのか、そしてその関係性について考えてみたいと思います。
ODっ子が悩む背景
起立性調節障害は、心身ともに子どもの生活に大きな制約をもたらします。例えば、朝起きることができないため学校に行けなくなり、不登校や学力低下を引き起こします。これは学校の授業に出れていないことに加えて、ODでは脳血流低下によって集中力・思考力が低下することが言われています(ブレインフォグ=脳に霧がかかったような感覚)。
また、周囲からの「怠けているのではないか」といった誤解やプレッシャーにより、自己肯定感が低下しやすく、心理的な負担がさらに増加します。
これらの状況は、子ども自身に「どうして自分だけがこんなに辛いのか」といった無力感や孤立感を抱かせることが多いです。
かくいう私も、当時は同年代で部活に励み、活躍している友人を見て不安や焦り、孤独感を感じていました。
親もまた苦しむ理由
子どもがODを患うと、その親も多大なストレスを抱えることになります。
日常生活で起こる出来事のストレス度を定量化したホルムズとレイの「社会的再適応評価尺度(SRRS)」を基に、夏目誠教授らが日本人版として作成した「勤労者ストレス評価表」。この尺度を元に考えると、親にとって子どものODの発症は、自分自身の健康問題と同等の心理的負担をもたらすことが分かります。
親が感じるストレスは、具体的には以下のようなものが挙げられます。
生活リズムの変化: 朝起きられない子どものために仕事や家庭のスケジュールを調整しなければならない。
学校との連携: 不登校が続く場合、学校や担任との連絡や交渉に追われることが多い。
子の将来への不安: 子どもの学力低下や進学・就職に対する不安が増加。
周囲からの視線: 子どもの症状が「怠け」や「甘え」と誤解され、親としての責任が問われるようなプレッシャーを感じる。
特に、日本社会では親が子どもの「出来・不出来」の責任を問われる文化的背景もあり、「自分の育て方が悪かったのではないか」といった罪悪感を抱える親も少なくありません。
子と親、二人三脚での対応が必要
ODは、家族全体で向き合う必要のある病気です。
親が子どもの苦しみに共感し、理解を示すことで、子どもは安心感を得ることができます。
しかし、親自身も限界があります。そのため、以下のような対応を推奨します。
情報収集と病気の理解
ODは、身体的な疾患であり、決して「怠け」や「甘え」ではありません。症状の発症メカニズムや回復率・再発率など、病気自体について正しく理解することが、親の不安を軽減し、子どもに寄り添う第一歩となります。
親自身のケア
親が心身ともに健康でいることは、子どもの回復にとって非常に重要です。
私も当時、母が自分を責めていたり、申し訳なさそうにされるのは一番辛かったです。
親自身が保護者の会などサポートグループを利用してみるのもいいかもしれません。
学校や医療機関との連携
学校の担任や養護教諭、医師との連携を密にし、子どもの状態を共有しながら、無理のない学習計画を立てることも重要です。また、子どもに適した治療法やリハビリプランを医師と一緒に考えることも大切です。
親子の絆を強める機会に
ODを患う子どもと親の間には、特別な「共感の絆」が生まれることがあります。私と母がそうであるように、一緒に病気と向き合う過程で、親子関係がより深まるケースも少なくないようです。そんなポジティブな気持ちで日々を乗り越えることが、親子双方のストレスを軽減する鍵となります。
重症度の高い起立性調節障害は、長期的な取り組みを要する病気で、親子間で衝突する機会はあるかと思いますが、ODを共通の課題と捉えて、ODを利用して、最終的には何か大きな教訓を得られたらいいなと思います。
ではまた!
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