起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)は、日常生活の中で身体的・心理的負担を強いられる疾患です。慢性的な疲労感、立ちくらみ、吐き気や頭痛、集中力の低下(脳機能低下)などに苦しみ、生活の質(QOL)が大きく低下することがあります。このような状態は、患者自身だけでなく、家族や学校環境にも影響を及ぼします。
特に、ストレスはODの症状を増幅・悪化させる要因として知られています。これは心理社会的ストレスが自律神経系に影響を与えることによります 。
そのため、適切にストレス対処ができることは、OD症状の改善や生活の安定化において重要な役割を果たします。
ストレスコーピングが重要な理由
1. 心身相関
ODは、心身症であり、心理社会的な負担が身体症状を増悪させることはよくあります。そもそもSeawardは全ての病気の70~80%にはストレスが関連していると述べています。ストレスへの適応力を高めることで、自律神経機能の安定化が期待され、症状の軽減につながります。
2. 長期的な健康管理の基盤
ODの治療として運動療法(非薬物療法)・薬物療法が効果的とされています。もちろんその通りです。しかし、そもそも日常生活におけるストレス管理ができていなければ、治療の成果をストレスが上回り、十分に治療効果を得られません。
3. 学校生活や社会生活への影響軽減
特に中高生の方にとっては、学校での不安やプレッシャーがODを悪化させるリスク要因となります。時が流れ大人になったとしても社会生活を送る中でストレスが皆無になることはありません。
つまり、ストレスを避けるのではなく、対処能力を磨いていく必要があるんですね。簡単に処理できるストレスレベルを上げていくことを目標に、ストレス耐性が上がることで、学校や社会、家庭での適応能力が向上させたいところです。
ストレスコーピングは質より量
私はかつて、どんなときでも万能な最強のストレスコーピングが一つ欲しいな!なんて思っていました。
しかし心理学やストレス研究の世界では、ストレスコーピングにおいて重要なのは「質より量」なんじゃないの!?といった見解が有力なようです。
これは複数の戦略を持つことがストレス管理においての柔軟性を高め、より効果的にストレスに対処できる可能性を上げるためです。
なぜ質より量なのか
1. ストレス状況は多様である
ストレスの原因や状況は多岐にわたります。例えば、仕事のプレッシャー、人間関係の問題、健康問題など、異なるストレス源に対して同じ戦略が通用するとは限りません。
→ 複数のコーピング手段を持つことで、状況に応じて適切な方法を選択できる柔軟性が生まれます。
2. 戦略の多様性が失敗リスクを軽減する
特定のコーピング方法が効果を発揮しない場合もあります。たとえば、運動がストレス軽減に効果的な人もいれば、逆に体調が悪い時にはその選択肢が使えないこともあります。
→ 複数の方法を持つことで、ある手段が効果を発揮しなくても、別の方法を試すことができます。
3. 自己効力感を高める
多様なコーピング方法を持つと、自分のストレス管理能力に対する信頼感(自己効力感)が高まります。これは「自分には問題を乗り越えるための道具がたくさんある」という安心感を与えます。
→ 自己効力感の向上により、ストレスそのものへの耐性も強化されます。
4. 予測不可能なストレスに備える
ストレス源は予測できないことが多いです。新しい状況に直面したときに、さまざまな戦略を試せる準備があると、迅速に対応できる可能性が高まります。
→ 特に新しい状況では、過去に使った方法が意外な形で役立つこともあります。
5. 気分やエネルギーに合わせた選択肢の提供
ストレスの状況によっては、高エネルギーを要する戦略(運動や旅行など)が適さない場合もあります。その時の自分の気分や体力に応じて選べるよう、選択肢が多い方が良いです。
→ 例えば、体調が優れない時には静かな瞑想や読書、元気がある時にはスポーツや外出を選べます。
6. ストレス軽減効果が累積する
ストレスコーピングは単独の大きな効果だけでなく、小さな効果が積み重なることで全体的なストレス軽減に寄与します。複数の戦略を日常的に取り入れることで、全体的なストレスレベルを低減することが可能です。
→ 例えば、朝に運動、昼休みに友人と話す、夜に読書をする、という複数のアプローチを組み合わせることで、1日のストレスが総合的に軽減されます。
7. 個人に適した方法を見つける過程の重要性
多様な方法を試すことで、自分に最適なストレスコーピング戦略を見つけることができます。この過程そのものが、ストレスを管理するための成長体験にもなります。
→ 人によっては意外な戦略(例えばガーデニングや手芸など)が効果を発揮する場合もあるため、量を重視することでこの可能性を広げられます。
まとめ
ストレスへの対処法を学ぶことはOD生活にとどまらず、一生涯を通じて重要なことです。
そしてストレスコーピングは「質より量」を重視することで、柔軟性、自己効力感、状況適応力を向上させると同時に、日常生活におけるストレス軽減の効果を最大化します。
このため、まずは多様な方法を試し、自分に合った組み合わせを見つけることが重要です。
しかし具体的にどのようなものが自分にあった方法なのかを自分で一から考えろと言われても大変ですよね。あと少々面倒ですよね(私はアイデアを出せと言われても面倒だな〜と思ったというのが正直なところです。)
そこで有難いことに、アメリカカウンセリング学会が「100のストレス軽減法」としてリストアップしてくれています。
しかも環境、身体的、認知的、創造的、精神的な手法などと、様々なカテゴリー毎に分類されており、状況や個人の好みに応じて選べるように設計されています。
次回以降、このアメリカカウンセリング学会が推奨する「100のストレス軽減法」を紹介していくので、気になる方法を試してもらえたらいいなと思います。
ではまた!
Seaward, B. L. (2006). Managing stress: Principles and strategies for health and wellbeing (5th ed.). Sudbury, MA: Jones and Bartlett Publishers.
100 ways to reduce stress: Making the balancing act more manageable. Retrieved from http://counselingoutfitters.com/ vistas/vistas11/Article_27.pdf

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